大航海時代とルネサンス 大航海時代 ルネサンス 歴史 参考文献 index

ルネサンス以前のイタリア絵画 1

1330年代からトスカーナ地方では農産物生産が著しく減少し、1340年にはフィレンツェは深刻な政治経済的危機に直面していた。
ピサのカンポサントの壁画「死の勝利」は1336年から42年の間に描かれていて、その影響を受けたオルカーニャの「死の勝利」も1340年代前半に描かれている。
1348年のペスト大流行ではシエナの人口の三分の二、フィレンツェの人口の半分が失われたとする説もあり、1363年、1374年にも再発を繰り返している。
ジョットの没後、フィレンツェの画家は活力を失い「変革率の著しい減少」を示す状態になっていた。オルカーニャの「ストロッツィ祭壇画」はそうした社会的不安のなかで教化的目的が強い作品とされている。厳格で観念的形式がこの祭壇画のメッセージを直接つたえている。
一方でドメニコ会をはじめとする托鉢修道会による俗語イタリア語での布教が活発に行われ、市民のより広い層へ伝わった。
ドメニコ会士ドメニコ・カヴァルカによる聖人伝や荒野での観想的隠遁生活を称揚する説教が、ピサ、カンポサントの壁画「テーベの隠修士たち(荒野の隠修士たち)」の着想源だとされている。またカヴァルカの聖人伝を、道徳観念を解りやすく伝えるために簡略化してピサ方言で編集されたものが平信徒の間で広く読まれていた。
「テーベの隠修士たち」の図像は以後流行し広く描かれたという。