サッセッティ礼拝堂の正面に設置された祭壇画。
前景では、家畜小屋の石棺（飼葉桶）の前の幼児キリストを聖母マリアがひざまずいて礼拝している。その右には到着したばかりの3人の羊飼い。石棺の後ろにいる老ヨセフは振り向いてマギ（東方三博士）の行列を見ている。行列の上の丘では羊飼いへの天使のお告げの場面。
1483年にフィレンツェに来たフランドルの画家ヒューホ･ファン･デル･フースの「ポルティナーリ祭壇画」の細密描写を意識して描かれたとされる。ギルランダイオはテンペラで描かれたこの作品で緻密な描写力、空間構成力、物語叙述力と洗練された色彩感覚を示している。遠景には北方的な都市の光景が描かれている。

ヴァザーリは3人の羊飼いを「人びとから神技とみなされた」と伝えているが実在の人物の肖像だとされている。幼児キリストの手前に描かれている五色鶸は受難の象徴。
マギの行列は古代ローマ風の凱旋門を通り、石棺にはアウグストゥスへのシビュラの預言の一節が刻まれている。家畜小屋の角柱にはローマ数字でMCCCCLXXXV（1485年）の年記が見られる。
1480年代　聖フランチェスコ伝

ギルランダイオ　Ghirlandaio
羊飼いの礼拝
1485年　板　テンペラ　167×167cm
フィレンツェ　サンタ･トリニタ聖堂　サッセッティ礼拝堂
世界美術大全集11　イタリア・ルネサンス1