1425年9月、マゾリーノはブランカッチ礼拝堂の仕事を中断、残りをマザッチョに任せてハンガリーへ旅立った。フィレンツェ出身でハンガリー国王の傭兵隊長だった人物（パトロン？）から遺産を相続するために呼ばれたともされている。1427年にフィレンツェに戻っている。
1428年教皇マルティヌス5世とその側近枢機卿ブランダ･ダ･カスティリオーネに招かれてローマへ向かった。ファブリアーノに続くローマ復興のためだった。
枢機卿ブランダのためにサン・クレメンテ聖堂カテリーナ礼拝堂に聖女カタリナ伝（上図）、聖アンブロシウス伝を描いた。この壁画にマザッチョが介入したとする説もある。 1420年代

マゾリーノ　Masolino
聖女カタリナと哲学者たち、車輪の奇跡
1428〜31年　フレスコ
ローマ　サン・クレメンテ聖堂カテリーナ礼拝堂
世界美術大全集11　イタリア・ルネサンス1
世界美術大事典　小学館

左　聖女カタリナと哲学者たち
カタリナはアレクサンドリアの高貴な家の生まれで、博学の処女、敬虔なキリスト教徒になり、キリストと「神秘の結婚」をしていた。アレクサンドリアではキリスト教徒が迫害されていたため、皇帝の前で50人の哲学者たちと論争、哲学者たちがキリストを否定できなかったため、哲学者たちは皇帝によって火刑に処された。（右側の窓枠状の部分、哲学者たちの前でカタリナが祈っている）
右　車輪の奇跡
皇帝は妃としてカタリナを迎えようとするが、カタリナはキリストの花嫁を理由に拒否した。再度申し込み、拒否されたため、皇帝は見せしめとして、カタリナを釘を打ち並べた車輪で八つ裂きの刑に処した。刑の執行になると、主の御使いが現れ刑車を打ち砕く。中央でカタリナは祈り、頭上では御使いの天使が車を破壊している。周囲では異教徒たちが破片を避け、左上のバルコニーでは、皇帝と従者が驚き、見つめている。