中心人物は「ティランニーア（悪政・専制政治）」。角を生やし牙をむいた悪魔の姿で、足下には黒い山羊がいる。キリスト教図像では「淫欲」を表すが、ここでは「邪な欲望」といったやや広い意味での象徴らしい。その下には捕らえられた平和（正義）。
周囲には悪徳の擬人像「残虐」「裏切り」「欺瞞」「激怒」「不和」「戦争」、空中には「吝嗇」「傲慢」「虚飾」と並び「専制政治」を生み出す９つの悪徳が「善政」を生み出す９つの美徳と対応している。人間としての倫理に基づく７つの大罪とは異なり、自由と共和主義実現の妨げとなる9つの悪徳。
悪政の部分　参考資料が異なるため用語の乱れがあります。

中世の美術家は、残されている宗教画だけでなく生活に密着した世俗的な仕事もしていた。政治に直結する、謀反人や罪人を見せしめのために描いた「さらし画」は13〜16世紀、北・中部イタリアで多く描かれていた。ただし政変などで破壊されることも多かった。 1330年代　善政と悪政の寓意

アンブロージョ・ロレンツェッティ　Ambrogio Lorenzetti
悪政の寓意
1338〜1340年　フレスコ
イタリア　シエナ　パラッツォ・プッブリコ
名画への旅5　天上から地上へ　講談社