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ルネサンス風の片蓋柱のある室内にいるエラスムス

エラスムスは1466年10月にロッテルダムで生まれ、1536年7月バーゼルで死去して、同地の大聖堂に埋葬された。
1514年に初めてバーゼルを訪れ、その後も度々滞在しているが、1521年11月から1529年4月まで長期滞在した間に、ホルバインは3点のエラスムスの肖像画を描いている。この作品では棚の上の本の表紙に1523年の年記がある。バーゼル美術館とルーヴル美術館にある「(著述する)エラスムスの肖像」も1523年の「マルコによる福音書注解」の冒頭を執筆していることから、同じ1523年に描かれたと考えられている。
年記が書かれた本の小口に「私はかのハンス・ホルバインです。私を真似るのは批評ほどやさしくないでしょう」という作者銘がある。紀元前5世紀末のギリシアの画家の言葉をもじっているので、エラスムスの文案だとされている。
手を置いている本の天に「ヘラクレスの功業」、小口に「ロッテルダムのエラスムス」と書かれている。エラスムスは1508年の「格言集」のなかの「ヘラクレスの功業」で「ヘラクレスの功業とは、他人に確かに最大級の恩恵をもたらすとしても、その作者にはほんの少しの名声とたくさんの嫉妬のほかには、ほとんどなんの利益も与えない労働のことをいう」と書いている。自らが報酬の少ない著述という労働をしていることを暗示している。
この肖像画は1524年にカンタベリー大司教ウィリアム・ウォーラムに贈られ、ウォーラムは1527年に似た構図の自らの肖像画をホルバインに描かせている。
世界美術大全集14 北方ルネサンス 1520年代
ハンス・ホルバイン(子)
ルネサンス風の片蓋柱のある室内にいるエラスムス
1523年 板 テンペラ 76×51cm
イギリス ロングフォード・キャッスル(ウィルトシャー)
ラドノー・コレクション