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マリアの誕生

画面左奥、聖堂の側廊内にベッドが置かれ、上体を起こしたアンナが侍女が差し出すスープを飲んでいる。二人に背を向け水差しを手にした助産婦らしい老女はマリアの湯浴みの後片付け、右奥ではもう一人の侍女が見舞いの来客と会っている。若い女性が抱いている生まれたマリアに向かって、うつむいたヨアキムがパンを持ち、水筒を担いで階段を上っている。マリアの頭上では香炉を振る天使とその上を輪になって連なる小天使が歓喜の場面を表している。
アルトドルファーはレーゲンスブルクの大聖堂堂内の遠近法的にかなり正確な下絵を描いている。しかし完成作では堂内の位置関係が不明瞭になって、現実感より幻想的な印象を与えるようになっている。中央の柱の柱頭は遠近法の消線上に並んでなく、身廊と側廊の関係も不明確。アルトドルファーは空間の正確な再現より、動感がある幻想性を描き出そうとしている。この作品では窓にも遠景が描かれていない。

世界美術大全集14 北方ルネサンス
1520年代
アルトドルファー
マリアの誕生
1520年頃 板 油彩 139×130cm
ミュンヘン アルテ・ピナコテーク