
キリストの復活
イェルク・ラートゲープは1485年頃に生まれ、フランクフルトなどで活動した画家。ヴェネツィアやネーデルラントを遍歴したらしく、ハウスブーフの画家やボス、とくにグリューネヴァルトからの影響を受けている。農民戦争で人々の反乱に加担したとして、1526年に四つ裂きの刑に処せられた。
1510年代の半ば、フランクフルトのカルメル会修道院の回廊と食堂に描いた「天地創造」から「最後の審判」にいたるフレスコ画は大作だったが、第二次世界大戦時に大部分が失われた。
同じ頃描かれたのが、ヘレンベルク祭壇画。多翼祭壇の扉を開くと、左から「最後の晩餐」「笞刑」「磔刑」「復活(右図)」が現れる。グリューネヴァルトのイーゼンハイム祭壇画からの影響を思わせるが、光と闇の神秘的奇跡を、明るい広場での出来事として描いている。空気のように実体を薄めたキリストが墓穴をすり抜けて復活している。グリューネヴァルトの神秘的威圧感とは異なる庶民性で、社会的不安の中の貧しい人々を感化したのかもしれない。色彩の使い方や兵士たちの異様な形相や姿勢は、マニエリスムを予告してもいる。
世界美術大全集14 北方ルネサンス
1510年代
ヘレンベルク祭壇画 モノクロ
イェルク・ラートゲープ
キリストの復活
1518〜19年 板 270×147cm
ドイツ シュトゥットガルト美術館
1510年代の半ば、フランクフルトのカルメル会修道院の回廊と食堂に描いた「天地創造」から「最後の審判」にいたるフレスコ画は大作だったが、第二次世界大戦時に大部分が失われた。
同じ頃描かれたのが、ヘレンベルク祭壇画。多翼祭壇の扉を開くと、左から「最後の晩餐」「笞刑」「磔刑」「復活(右図)」が現れる。グリューネヴァルトのイーゼンハイム祭壇画からの影響を思わせるが、光と闇の神秘的奇跡を、明るい広場での出来事として描いている。空気のように実体を薄めたキリストが墓穴をすり抜けて復活している。グリューネヴァルトの神秘的威圧感とは異なる庶民性で、社会的不安の中の貧しい人々を感化したのかもしれない。色彩の使い方や兵士たちの異様な形相や姿勢は、マニエリスムを予告してもいる。
世界美術大全集14 北方ルネサンス
1510年代
ヘレンベルク祭壇画 モノクロ
キリストの復活
1518〜19年 板 270×147cm
ドイツ シュトゥットガルト美術館
