大航海時代とルネサンス 大航海時代 ルネサンス 歴史 参考文献 index

キリストへの嘲笑

大祭司カイアファの屋敷で裁判を受けるキリスト。目隠しされ両手を縛られたキリストが「メシア、お前を殴ったのはだれか。言い当ててみろ」と嘲笑されている。左端の男が笛や太鼓ではやし立て、前後の形吏が引きずり、殴りかかっている。右上の右手を出して指示しているように見える白いシャツの男がカイアファかと思ったが、違うらしい。グリューネヴァルトの自画像とする説もある。彼に語りかける人物を、女性神秘思想家ビルイッタの黙示文学などに登場するキリストの同情者とする説もある。
17世紀の初めまでアシャッフェンブルクの参事会聖堂に置かれていた。バイエルン公ヴィルヘルム5世の所蔵の後、所在を変えている。20世紀初めの修復で下縁から「1503年12月23日」の年記が現れた。古い模写の紋章などから、1503年12月に妹を亡くした、アシャッフェンブルクの市民が追善のために注文した墓碑板絵だったと推測されている。
構図や人物の動きなどにホルバイン(父)やデューラーからの影響がみられる。不明な部分が多いグリューネヴァルトの修業時代を推測させる。この作品では、キリストを左前方へずらし、二人の形吏を対置し、背後の空間にそれぞれの役割を演じる人々を配置することで場面としての動きとまとまりを作り出している。また「最後の晩餐」でみられた賦彩法が発展している。

世界美術大全集14 北方ルネサンス
1500年代
グリューネヴァルト
キリストへの嘲笑
1504〜05年 板 油彩 109×73.5cm
ミュンヘン アルテ・ピナコテーク