ボスの作品としては珍しく寄進者像が描かれている。両翼にそれぞれ守護聖人を伴いひざまずいている。左翼に鍵を持った聖ペテロ、右翼に聖アグネス。アグネスの持物、子羊は妻の頭上に描かれている。左翼で子羊と対応しているのはヨセフ、産着を火にかざして乾かしているらしい。
中央パネルは「マギの礼拝」。空には彼らを導いた星が輝いている。聖母マリアの膝に幼児キリスト。ひざまずき祈りを捧げている老年のメルキオールは、東方からの黄金の人物群像を地面に置いている。中年のバルタザールは銀の皿で乳香を捧げ、ムーア人の王カスパールはミルラ（没薬）の壺を持っている。家畜小屋に描かれているのは牛ではなくロバ。廃屋となった小屋は旧約のシナゴーグを象徴しているともされる。建物の構造が解らない。

一般的なヨセフの位置に描かれている、豪華な王冠をかぶった半裸の人物は反キリストともヘロデ王とも解されている。反キリストはキリストに先立って現れる偽りの預言者、ヘロデ王は嬰児虐殺などの罪で、神の罰として恐ろしい病気にかかったとも、マギの武装した軍隊に圧倒され、彼らに従ったともされる。
1500年代

ボス　Hieronymus Bosch
マギの礼拝 （三連祭壇画）
後期（1505〜16年頃）　板　油彩
138×72cm（中央パネル）
マドリード　プラド美術館
世界美術大全集14　北方ルネサンス
画像は　週刊 西洋絵画の巨匠 28　ボス　小学館