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キリストの聖顔布を持つ聖女ヴェロニカ

この作品によって、「聖女ヴェロニカの画家」と呼ばれている姓名不詳の画家はシュテファン・ロッホナー登場以前のケルン派の中心人物だった。衣襞にボヘミア美術の影響がみられる、ドイツの「柔軟様式」の代表者とされる。
画面いっぱいに広がる聖布をヴェロニカが両手で支える単純な構図だが、聖女の首の傾きや両手の高さの違い、聖布左右端の襞の違い、小天使たちによって左右相称にならないための工夫がされている。金地の背景に暗赤色の頭巾が聖女の顔を枠ずけ、キリストの顔の周りには聖布が広がっている。広い額に小さな口、先細りの顎をもち小作りの体軀がこの画家の特徴。
ヴェロニカは伝説上の人物、Vera Icona(本当の画像)の擬人化によって生まれたとされる。1300年頃から宗教劇の影響を受けた伝説の解釈によって、ゴルゴタの丘へ向かう途中、十字架の重みで倒れたキリストに顔を拭くハンカチを渡す若い女性として描かれた。この作品のように、キリストの顔が写った聖布を両手で広げる単独の像としても描かれた。
1420年代
聖女ヴェロニカの画家
キリストの聖顔布を持つ聖女ヴェロニカ
1420年頃 カンヴァス(板で裏打ち) 78.1×48.2cm
ミュンヘン アルテ・ピナコテーク
世界美術大全集14 北方ルネサンス