
キリストの降誕
ロベール・カンパンはフランドルの南トゥルネで活躍した画家。1406年頃からトゥルネに居を定め、1423年には画家組合の長を務め、ギルドの代表として市の政治に関与した時期もあった。主に富裕な新興都市市民のために制作したとされる。同定された作品がなかったが、フレマールの画家と呼ばれていた逸名画家がロベール・カンパンだと考えられている。1427年にロヒール・ファンデル・ウェイデンがカンパンに弟子入りしていて、ロヒールとフレマールの画家の作品に師弟関係を窺わせる様式的類似がみられることなどが理由とされる。
「キリストの降誕」は聖女ビルイッタの「啓示録(1360〜70年頃)」に基づいているとされる。この新しい降誕図は数十年の間にイタリアから北方諸国に広まったらしい。
聖母はヴェールを脱いで髪をほどき、白い衣を着ている。ヨセフが持っている蝋燭の光は聖なる光の到来で力を失う。奥の扉口から近づく、粗野だが実直そうな三人の羊飼いはそれぞれ異なる反応を見せている。
(地面に寝かされている?)キリストの右にいるのは二人の助産婦。青い衣裳で右手を押さえているのは、聖母の処女性を疑った不信心なサロメ。後ろ向きに座っているのが信心深いゼベル(ここではアゼル)。サロメの銘帯には「証しがなされたら私はそれを信じましょう」、ゼベルの銘帯には「処女が息子を産んだ」と記されている。その上を飛ぶ天使の銘帯には「赤子に触れなさい、そうすれば癒されるでしょう」と書かれ、馬小屋の上の3人の天使の銘帯には「いと高きところに栄光あれ」と讃歌が記されている。
背景の岩山から昇る太陽は、この世に神の光がもたらされたことを表している。右側に広がる冬の風景描写は自然観察に基づいていて、木々は葉を落として枝を広げ、凍てついた道には朝日が長い影を落としている。
1420年代
「キリストの降誕」は聖女ビルイッタの「啓示録(1360〜70年頃)」に基づいているとされる。この新しい降誕図は数十年の間にイタリアから北方諸国に広まったらしい。
聖母はヴェールを脱いで髪をほどき、白い衣を着ている。ヨセフが持っている蝋燭の光は聖なる光の到来で力を失う。奥の扉口から近づく、粗野だが実直そうな三人の羊飼いはそれぞれ異なる反応を見せている。
(地面に寝かされている?)キリストの右にいるのは二人の助産婦。青い衣裳で右手を押さえているのは、聖母の処女性を疑った不信心なサロメ。後ろ向きに座っているのが信心深いゼベル(ここではアゼル)。サロメの銘帯には「証しがなされたら私はそれを信じましょう」、ゼベルの銘帯には「処女が息子を産んだ」と記されている。その上を飛ぶ天使の銘帯には「赤子に触れなさい、そうすれば癒されるでしょう」と書かれ、馬小屋の上の3人の天使の銘帯には「いと高きところに栄光あれ」と讃歌が記されている。
背景の岩山から昇る太陽は、この世に神の光がもたらされたことを表している。右側に広がる冬の風景描写は自然観察に基づいていて、木々は葉を落として枝を広げ、凍てついた道には朝日が長い影を落としている。
1420年代

キリストの降誕
1425年頃 板 87×73cm
フランス ディジョン美術館
世界美術大全集14 北方ルネサンス