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愛のアレゴリー2

パノフスキーの「イコノロジー研究 時の翁」では、タピスリー(壁掛)「潔白図」と対になる予定の下絵をもとに、この愛のアレゴリーが描かれたとされている。コジモ1世が下絵を気に入って、油彩画にすることを命じたとすると、入念に構想が練られたと考えられる。
若桑氏は1540年代の宮廷芸術という視点から、中世の「薔薇物語」以来の宮廷的恋愛についてのさまざまな寓意の寄せ集めだとし、宮廷人は複雑な寓意を読み解くことに喜びを感じていた、と考えている。また青は愚者(空虚)の色で、仮面をかぶった「真理」(実は虚偽)はヴェールを剥ぐふりをしながら、逆に覆っているとしている。反対語を駆使した言葉遊びの詩を得意とした詩人のように、奇想に富んだ詩を書いていたブロンズィーノが、エロスの虚と実の入り交じる曖昧な奇想を、さまざまな解釈ができるように表現したともとらえている。
「レオナルド・ダ・ヴィンチの手記(岩波文庫)」の文学に「寓話」「笑話」がある。ミラノでの宮廷生活が垣間見られるようにも思う。
右の「潔白の証明」は妬み、激怒、貪欲、裏切を表す犬、ライオン、狼、蛇によって脅かされている「潔白」を、剣と秤を持った「正義」が助けている。背中に砂時計を乗せ翼をつけた「時」は若い娘「真理」を抱いている。
「イコノロジー研究 上」(ちくま学芸文庫)
世界美術大全集15 マニエリスム 愛のアレゴリー 1540年代
ブロンズィーノの原作をもとにした
ジョヴァンニ・ロスト「潔白の証明」壁掛 モノクロ
フィレンツェ ガレリア・デリ・アラッツィ