大航海時代とルネサンス 大航海時代 ルネサンス 歴史 参考文献 index

十字架降下

右下に署名と年記がある。ヴォルテッラのサン・フランチェスコ聖堂の礼拝堂に置かれていた。その後大聖堂に移され、市立美術館に移された。1980年に修復され、補色のカンジャンテ(玉虫色)が甦った。十字架や遠景の山々が平面的に描かれているため、重厚なルネサンス絵画と比べて未完成のように感じるが、署名と年記があることから完成作と考えられている。
研究者たちは、ロッソの絵画には「ノン・フィニート(未完)」という手法が使われていると考えるようになった。丁寧に塗らず、カスティリオーネが理想とした「スプレッツァトゥーラ(さりげなさ)」で本質的なものだけを大胆に描き、細かくは描かないという方法。若桑氏はミケランジェロが粗彫りで残した4体の「奴隷」の面取の手法を絵画でおこなった、としている。画面(前景の女性の肩と梯子の右の足)に「紫っぽく」「青」と書き込みが残されているが、その色にはなっていない。ロッソが「色」で画面を構成していた証拠だともされる。色の鮮やかさを維持し、立体を表現するには異なった色を並置するカンジャンテ(玉虫色)を使うことになる。ミケランジェロがシスティーナ礼拝堂天井画で復活させた中世的手法だが、前景右のヨハネの姿に「ゴシック的」なものを見、この時代の新たな宗教感情や不安な精神が現れているとする説もある。
世界美術大全集15 マニエリスム
1520年代
ロッソ・フィオレンティーノ
十字架降下
1521年 板 油彩 341×201cm
イタリア ヴォルテッラ 市立美術館