大航海時代とルネサンス 大航海時代 ルネサンス 歴史 参考文献 index

弓をつくるキューピッド

ボローニャから故郷パルマに戻る際の宣伝用に描かれたと推測されている作品。パルミジャニーノが死去したとき、工房に残されていた作品をすべて(素描557枚)購入したとされる、バイアルディが最初に所有していた。
現在ローマ・カピトリーノ美術館にある古代彫刻を、後ろから描くという奇想に挑んだとも考えられている。この古代彫刻は乳房が膨らんでいて、両性具有だったと考えられている。パルミジャニーノの作品にも乳房の膨らみがみられ、少女のように髪を編んでいる。
キューピッドの両足の間で二人の子供(男女)が争っている。ミケランジェロの「勝利(1527〜34年頃)」が愛における敗北と勝利の寓意だったことから、この作品も(制作時期が重なっているが)キューピッドの勝利を表しているとされる。
書物がキューピッドに踏みつけられているのは、エロス(愛)が知性に打ち勝つことの寓意。二人の子供についての定説はまだない。ヴァザーリはキューピッドの足に触れようとしている女の子を男の子が抑えていると記している。男の子の背中に翼があることからキューピッドであるともされている。プラトンの「饗宴」で述べられているような、両性具有のキューピッドの完全なエロス(愛)が、男女の愛に打ち勝つという解釈もなされている。
個人的に気になるのは光源。対象物だけに光が当たっているが背景は暗い。

世界美術大全集15 マニエリスム 1520年代
パルミジャニーノ
弓をつくるキューピッド
1527〜30年頃 板 油彩 135×65.3cm
ウィーン 美術史美術館