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聖女カタリナの神秘の結婚

「ローマ劫掠」に遭ってボローニャに逃れていた頃の作品。ヴァザーリは「聖母が後ろを向いて座っている素晴らしいポーズ」と記している。優美さを追求して、人物の輪郭はデフォルメされている。聖母の右腕に、ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂天井画「エリュトレイアの巫女」、聖母とキリストの関係にコレッジョの同主題作、左下のヨセフにコレッジョの「聖家族」からの影響がみられる。画面奥に映る二人の人物の影はジュリオ・ロマーノの「猫の聖母」と似ている。
この作品は、先人の作例を取り入れながら、抽象的で図式的に構想されている。画面が上中下3段に分けられている。下段にはヨセフの頭部とカタリナの持物の車輪が大きく描かれ、中段では主人公の3人が対角線上の身振りと視線で結びつけられ、上段には画面奥の二人の人物の影が曖昧な視点で描かれている。
カタリナの腕と聖母の右腕は車輪のような円形をつくり、奥上部の円形の窓と手前の車輪で繰り返されている。ヨセフの視線は斜めにカタリナを見つめ、カタリナは聖母を見つめ、聖母はキリストとその奥を向いている。ジグザクな視線は斜め奥の円形の窓に向かっているが、全体の空間軸が傾いている。斜め奥へ向かう方向性はマニエリスムの特徴の一つで、パルミジャニーノはティントレットとともに空間構成に優れていた。

世界美術大全集15 マニエリスム 1520年代
パルミジャニーノ
聖女カタリナの神秘の結婚
1527〜30年頃 板 テンペラ 74.2×57.2cm
ロンドン ナショナル・ギャラリー