「聖アンナと聖母子（1512年頃）」につながる習作のなかで現存する1点。1696年頃にミラノでこの習作を見たという記録がある。ミラノからヴェネツィアへ移り、1763年に英国人が購入。英国王立アカデミーを経て、1962年にナショナル・ギャラリーに移された。
1501年フィレンツェに戻ったレオナルドは、フィリッピーノ・リッピから制作を譲られたサンティッシマ･アンヌンツィアータ聖堂の祭壇画の習作を公開した。多くの市民が押しかけとヴァザーリが伝えているこの習作も、それを見た人物がイザベッラ･デステに宛てた手紙から、「聖アンナと聖母子」と同じ主題だったらしい。
この作品は聖アンナとマリアの頭部が並び単調なことからルーヴルの「聖アンナと聖母子」の前段階を示しているとされるが、彫刻のようにとらえられた各人像は堂々とした存在感を見せている。様式的つながりから「最後の晩餐」制作の後に描かれたと考えられている。
1490年代

レオナルド･ダ･ヴィンチ　Leonardo da Vinci
聖アンナと聖母子、幼児の洗礼者聖ヨハネ
1498年　紙　木炭　鉛白　139×101cm
ロンドン　ナショナル・ギャラリー
世界美術大全集12　イタリア・ルネサンス2