サンタ･マリア･ノヴェッラ聖堂フィリッポ･ストロッツィ礼拝堂の壁画で良く知られた作品。フィリッピーノ・リッピの特異な画風と個性を示している。
場面はフィリッポ･ストロッツィの守護聖人で十二使徒のひとり聖ピリポの物語。スキタイ地方で伝道活動をしているとき、異教徒に捕らえられたピリポは軍神マルスの偶像に香を捧げるよう強要された。その時、神殿の下の穴から竜が現れ、神官の息子と二人の将官の命を奪い、毒のある息で人々を倒した。ピリポが偶像を打ち倒し、主の十字架をあがめるなら助けようと言い、人々が約束したので、竜を追い払い、三人を蘇生させた。
1490年代

中央にマルス神殿。台座の上には人間の姿で表されたマルスの像。神殿はさまざまな物で飾られ、神殿の前にはうずくまる竜、祭司は驚いて倒れた息子を見つめ、両側の異教徒たちは悪臭に鼻をつまみながら竜を見守っている。

フィリッピーノ・リッピ　Filippino Lippi
マルス神殿から竜を追い出す聖ピリポ
1497年頃〜1502年　フレスコ　640×550cm
フィレンツェ　サンタ･マリア･ノヴェッラ聖堂
フィリッポ･ストロッツィ礼拝堂
世界美術大全集11　イタリア・ルネサンス1
フィレンツェ・ルネサンス4　再生への讃歌　NHK