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聖ヒエロニムス

18世紀以前にヴァティカンにあったともされるが、一時期スイスの女流画家の所有となっていた。1803年に書かれたその女流画家の遺言書にこの絵のことが書かれている。その後所在が不明となり、1820年頃切断された状態で、ナポレオンの伯父で収集家のジョゼフ・フェッシュ枢機卿によってローマで偶然、別々に発見された。教皇ピウス9世(在位1846〜78)が同枢機卿の遺族から購入し、1846〜47年にヴァティカーノ絵画館に入った。
下書き状態で残されている作品だが、1993年の洗浄修復でいくつかわかったことがある。クルミ材に4層の地塗りが施され、初期油彩技法の油性テンペラで描かれている。遠景の空と山は岩群青(アズライト)を用いて手のひらと指で描かれている。岩の描写の一部は「岩窟の聖母(ルーヴル美術館)」と結びつくことなど。
荒野で苦行を重ねるヒエロニムスは、人類の贖罪と救済のために十字架上で血を流したキリストの苦痛を自らも体感しようとしている(右上部岩窟の空洞内に磔刑像がある、とされるが確認できない)。聖者の写実表現はレオナルドが人体解剖によって、知識を十分に習得していたことを示すとされるが、首の後ろから腕にかけてのS字状の白っぽい部分が気になる。負傷したライオンを救ったことで離れなくなったと伝えられる、吠えるライオンも相対して配置されている。
1480年代
レオナルド・ダ・ヴィンチ Leonardo da Vinci
聖ヒエロニムス
1482年頃 板 油彩 102.8×73.5cm
ヴァティカーノ絵画館
世界美術大全集12 イタリア・ルネサンス2