「春（プリマヴェーラ）」、「ヴィーナスの誕生」とともにロレンツォ･ディ･ピエルフランチェスコの注文で制作された作品らしい。後にはカステッロの別荘の同じ部屋に3点が掛けられていたと伝えられている。
盾を背負い斧が付いた大きな槍を持ち、勝利と平和の象徴オリーヴの小枝を頭や上半身に巻き付けたパラス･アテナ。（人々を導く真実、聡明、慎重、才知の女神ミネルヴァは当時の新プラトン主義者たちの間ではギリシア名パラスと呼ばれていた。）
パラスが弓を持ち矢筒を肩に掛けた半人半馬のケンタウロスの髪をつかんでいる。パラスの衣裳に見える三つ組の指輪の模様は、老コジモが初めて用いたメディチ家の紋章とされている。（ロレンツォ豪華王の個人的紋章とする説もある）
作品の意図は、思慮分別の象徴パラスがケンタウロスを制御していることから、官能性と暴力に対する理性の優越を讃えたもの、道徳的寓意による若い注文者への訓戒画とされている。
背景の海や船からナポリ戦争を終結させたロレンツォ豪華王の外交的手腕を讃えたものとする説もある。
1480年代

ボッティチェリ　Botticelli
パラスとケンタウロス
1483年頃　カンヴァス　テンペラ　207×148cm
フィレンツェ　ウフィツィ美術館
世界美術大全集11　イタリア・ルネサンス1