1451年〜53年頃、フラ･アンジェリコがローマへ旅立つ前に、ピエロ･デ･メディチによって依頼され、フィレンツェのサンティッシマ･アンヌンツィアータ聖堂の銀器を収める戸棚を飾るために描いたもの。35面の装飾パネルの内、初めの10面ほどはフラ･アンジェリコが描き、残りの部分はバルドヴィネッティ他助手によって描かれた。
ヨセフは夢で天使から、ヘロデ王が幼児キリストを殺そうと探しているからすぐエジプトへ逃れるようにと告げられ、聖母子を伴って旅立ったという場面。
画面下には「起きて子供とその母親を連れ、エジプトへ逃れよ（マタイによる福音書）」、上辺には「詩篇」55のダヴィデの詩から「鳩の翼が私にあれば飛び去って、宿を求め」に続く「はるかに遠く逃れて荒野で夜を過ごすことができるのに」の文字がある。
真昼の太陽の光に基づく色彩表現、三人の衣服の色、微妙な濃淡の推移によって色彩が響き合っている。風景もさまざまな光の反映による新しい風景像を示唆している。
1450年代

フラ･アンジェリコ　Fra Angelico
エジプトへの逃避　銀器戸棚装飾
1451〜53年　板　テンペラ　38.5×37cm
フィレンツェ　サン・マルコ美術館