大航海時代とルネサンス 大航海時代 ルネサンス 歴史 参考文献 index

愚者の船

ボートの中にはフランシスコ会の修道士、リュートを奏でる修道女がいて、樹木から下がったパン(聖餅)を食べようとしている。周りには酔っ払いの俗人たち。喧嘩したり、わめいたり、水中で乾杯したり、右側で枯れ木に座っている道化も飲んでいる。木の茂みから現れた男は、マストにくくられた鵞鳥の丸焼きを切り取ろうとし、その上の旗にはイスラム教の三日月が描かれている。
15〜16世紀のネーデルラントでは、ボートに新緑の樹木を飾って川を下るのが「5月1日」の行事だった。聖務日課書や時禱書の「5月」には、ボートの中で笛やリュートを奏でながら恋を楽しむ若い男女が伝統的に描かれていた。
聖職者の様子は、13世紀前半に成立した俗謡集「カルミナ・ブラーナ」の「酒の歌」を思わせる。テーブルの上のサクランボは、女性性器の象徴とされていて男女の愛の営みを暗喩している。
ヤコブ・ファン・ウーストフォーレンの詩「青船のギルド(1413/14年)」のほか、ゼバスティアン・ブラントの「愚者の船(1500年にオランダ語訳)」、エラスムスの「痴愚神礼讃(1509)」ともつながる諷刺を目的とした寓意画。
細長い画面から、二連か三連の祭壇画の一部だったとも考えられている。
1480年代
ボス Hieronymus Bosch
愚者の船
中期(1485〜1505年頃) 板 油彩 57.8×32.5cm
パリ ルーヴル美術館
世界美術大全集14 北方ルネサンス