大航海時代とルネサンス 大航海時代 ルネサンス 歴史 参考文献 index

ベッカフーミ

ドミニコ・ベッカフーミ(1486〜1551)
Beccahumi
シエナの画家。農夫の息子だったドミニコは、父の主人でシエナの市政にも関わっていたロレンツォ・ベッカフーミに才能を見いだされ、主人の名前で呼ばれるようになった。主人の外交活動に従ってローマへ行き、ミケランジェロやラファエロを知り、シエナの政治的・宗教的変化に関連した作品を制作した。
作品の特徴は色彩と明暗の表現的な力。ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂天井画の影響とされているが、ドゥッチョから引き継がれた、シエナ派の宗教的神秘性とのかかわりも指摘されている。彼が描く聖人の目はバロックの法悦的宗教画を先駆け、「四福音書記者のための習作」では形態は描かれず、人物に反射する光と闇が斑点として描かれている。1503年にシエナに来たドッソ・ドッシから伝えられたレオナルドの明暗法の影響もあるとされる。
「反逆天使を撃つ大天使ミカエル(1528年頃)」の黙示録的恐怖はツッカリの「最後の審判(フィレンツェ大聖堂ドーム)」に受け継がれている。恐怖の表現も新奇(ビザール)を求めるマニエリストにとって美の領域になった。代表作「マリアの誕生(1530年頃)」は聖母の聖性の擁護と贖罪の再確認のために描かれたもので、暗闇に聖なる者が浮かび上がっている。
1521年以降にシエナ大聖堂の舗床モザイク「アハブとエリヤの物語」を制作したことからベッカフーミがシエナを代表する画家だったことがわかる。1529年のカール5世入城の際には、紙粘土製の皇帝騎馬像を制作し、市庁舎に皇帝を迎える政治的寓意画を描いている。しかし、カールはコジモ1世にシエナ制圧を許可し、独裁者の悪政が続いていたシエナは、1555年以降独立を失った。
ベッカフーミ
マリアの誕生 モノクロ
1530年頃 板 油彩 イタリア シエナ 国立絵画館