大航海時代とルネサンス 大航海時代 ルネサンス 歴史 参考文献 index

仕立屋

ベルガモ近郊に生まれたジョヴァンニ・バッティスタ・モローニはモレットの弟子だった。宗教画はモレットの模倣に止まったが、肖像画ではモデルの理想化や美化を排し、平明なリアリズムで描く独自の作風を作っている。
左上からの光が背景に微妙な陰影を作っている。衣裳も白い上衣と赤い脚衣で、色彩の使用も控えめに抑えられている。仕事中の手を止めた瞬間を捕らえ、ゆったりとしたポーズと暖かな眼差しが親密感を生んでいる。貴族を描いたティツィアーノ、鋭く内面を表出するロットとは異なる、現実の人間をそのまま表現する、近代的レアリスムが感じられる。
17世紀にヴェネツィアのグリマーニ家の所蔵とする記録があり、いくつかの個人コレクションを経て現在の美術館に収められた。仕立屋ではなく「織物職人」ともされる。
1560年代
モローニ Moroni
仕立屋
1565〜68年 カンヴァス 油彩 97×74cm
ロンドン ナショナル・ギャラリー
世界美術大全集13 イタリア・ルネサンス3