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無原罪の御宿り

フィレンツェの貴族ビンド・アルトヴィーティの家族礼拝堂の祭壇画として描かれた「無原罪の御宿り」のレプリカ。ヴァザーリはこの主題の作品を繰り返し描いていて、この作品はのちに描かれたまったく同じ図像。ルターによって聖母の神性とその崇敬が否定されたこの時期、教皇庁にとって聖母の神性擁護の主題は緊急なものになっていた。ヴァザーリはボルギーニの神学的助言を受けて、ルターへの反撃と聖母崇敬の擁護という複雑な内容を描きだしている。
画面は光輝く天上と罪のうごめく地上に分けられ、中心には原罪のもとになった木がある。これに縛り付けられている手前の裸体の男女がアダムとエヴァ。王や聖職者も原罪を負った人類として縛り付けられ、救済してくれる聖母を仰ぎ見ている。その木には蛇=サタン(上半身は女性)が巻き付き、その額を聖母が踏みつけている。
聖母が純潔でキリストを懐妊したことは、エヴァ以降の人類は原罪を負っていることから、無理があるが、聖母はエヴァ以前に神によって創造されたと考えられた。天使に支えられて祈る、天上の存在の聖母が人類を救済するキリストを産みだした。その聖母が蛇=サタンを踏みつけている図像は反ルターの図像で、蛇=サタンはルターを意味していた。対抗宗教改革期の反ルター図像のマニエリスム的な作品。
1541年に家族礼拝堂の祭壇画を描いたのか、このレプリカを描いたのかわからない。

世界美術大全集15 マニエリスム 1540年代
ジョルジョ・ヴァザーリ
無原罪の御宿り
1541年 板 油彩 58×39cm
フィレンツェ ウフィツィ美術館