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死せるキリストと天使たち

ローマで描かれた作品。ヴァザーリはサンセポルクロの司教トルナブオーニの委嘱だったと伝えている。トルナブオーニはロッソと同年にフィレンツェで生まれ、28才で、峻厳な改革派教皇ハドリアヌス6世からサンセポルクロの第2司教に任命された。秘跡の管理と聖餐の秘跡の擁護に関する教会の改革に携わった厳格な宗教改革者で、ロッソのイタリアでの有力なパトロンだった。
背景は暗く、キリストの体に光が当たっている。左の傷跡を覗いている天使の首と巻き毛に光が当たり、横顔は暗くなっている。緑と赤の補色のカンジャンテ(玉虫色)、帯が緑から黄色に変化している。左から2番目の天使は、キリストの体を支え、手で脇腹の傷に触れていて、キリストの贖罪を示しているとされる。右の天使はブルーとピンクのカンジャンテで描かれ、キリストの体の影が映っている。
教皇庁にとって重要なのは、キリストの贖罪とその秘跡である聖餐の確認だった。ミサで拝領するパンと葡萄酒はキリストの体そのものだとし、象徴行為だとする説を異端とした。それはトレント宗教会議でも確認されている。
蝋燭は祭壇を意味し、血の跡もないキリストの体は、その死によって人類の救済が成就したことを表しているともされる。キリストの足先の描き方や陰毛などは生々しい。
世界美術大全集15 マニエリスム 1520年代
ロッソ・フィオレンティーノ
死せるキリストと天使たち
1526/27年頃 板 油彩 133.5×104.1cm
ボストン美術館