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受胎告知

ロットは1525年末、ベルガモからヴェネツィアに戻り1549年まで住んでいる。右はマルケ地方レカナーティの祈禱堂に置かれていた作品。
「受胎告知」は一般的に聖母と天使が向き合う形で描かれるが、ここでは二人とも正面を向いている。突然の天使に驚いた聖母は、両手を挙げ遠くを見ている。天使はたくましい右手を挙げ、戸口の上の雲に乗った神は聖母の方にその腕を伸ばしている。邪悪のシンボルとされる猫は背を丸めて逃げようとしている。陰は近くは濃く、遠くなると薄く描かれている。
画面では暗いが、左奥には頭巾や燭台などの日用品が描かれ、戸口の外には明るい空を背景に、薔薇の垣根、松、糸杉などが描かれている。静かな背景と慌ただしい人物の動き、このような表現が古典的なヴェネツィア絵画に受け入れられなかった訳らしい。
ロットは貧困のためか1538年から出納簿をつけていて、金銭の収支だけでなく作品についてや生活の不安なども記している。ヴェネツィアで住居を転々と変えていたロットは1549年、70歳近くになってマルケ地方に移っている。アンコーナからロレートに移り修道院に入っている。この間にも多くの作品を制作していたらしい。出納簿は1556年9月1日のメモで終わり、1557年7月の記録では故人とされている。
1520年代
ロレンツォ・ロット Lorenzo Lotto
受胎告知
1527年 カンヴァス 油彩 166×114cm
イタリア レカナーティ(マルケ) 市立絵画館
世界美術大全集13 イタリア・ルネサンス3