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反逆天使を撃つ大天使ミカエル

1524年頃、シエナのサン・ニコロ・アル・カルミネ聖堂の代表が、大天使ミカエルが反逆天使を追い落とす主題の祭壇画をベッカフーミに委嘱した。「ヨハネ黙示録」の、天使が竜の姿をした悪魔を呪われた罪人の魂とともに地底に閉じ込めるという話が典拠。対抗宗教改革の頃、ルターをサタンになぞらえて、大天使ミカエルを異端と戦う教会の象徴とする作品が多く描かれた。しかし、最初の作品は完成間近になって受け取りが拒否されてしまった。
ヴァザーリはこの第2作(1528年頃)を絶賛している。「頂上には神が多くの天使に取り巻かれて雲の上にあり、それは非常に見事で優美である。中段には武装した大天使ミカエルが、飛びながら地の底にサタンを追い落としている。底では城壁が焼け、洞窟は崩れ落ち、火の池が燃えている。さまざまな姿態をした反逆天使たちと裸体の霊魂が火の中を泳ぎ回りのたうち回っている。それらは実に素晴らしいマニエラと優美さとで描かれている。この絵の暗い闇と炎のきらめきは実に素晴らしい」
最初の作品と違うのは、上段に神が描かれていること。異端撲滅の意志がより強く示され、地獄の炎や落ちていく反逆天使の異様な姿も恐怖感を強めている。
ヴァザーリの「素晴らしいマニエラ」が何を示しているのか、よくわからない。光が当たる天使・赤いマントと暗い神、ミカエルの背後を照らす青い光、地獄の炎や火の池の光で浮かび上がる人々。
世界美術大全集15 マニエリスム
最初の作品 1520年代
ベッカフーミ
反逆天使を撃つ大天使ミカエル
1528年頃 板 油彩 347×225cm
イタリア シエナ
サン・ニコロ・アル・カルミネ聖堂