大航海時代とルネサンス 大航海時代 ルネサンス 歴史 参考文献 index

キリストの降誕

当初設置された場所にある作品。ベッカフーミがローマへ旅行した直後に制作され、廃墟は当時の古代ローマの廃墟が描かれている。古代ローマの廃墟はキリスト誕生によって滅びる異教世界を現していて、キリスト誕生に始まる新しい世界(遠景の明るい空?)を暗示する、キリストの降誕の伝統的設定。
空を舞う天使には、ラファエロのヴィッラ・ファルネジーナ「プシュケの間」のアモル(キューピッド)や、ボッティチェリの「神秘の降誕」(雰囲気は全く違う)からの影響がみられる。
聖母もラファエロの図像から採られているが、比例は細長く、右手の指は長く、姿勢や首の傾き、表情などに憂愁を帯びたマニエラがみられる。衣裳には細かい襞が繰り返され、幼児キリストを包む布にも及んでいる。聖母はその布を取り除こうとしているが、(赤い色が血にも見え)キリストの遺骸を包む布のようにも見える。左の天使は悲愴な表情でキリストを指さしている。
降誕の図像であるにもかかわらず、憂愁の雰囲気と悲しみの視線を受ける幼児キリストは、聖餐の秘跡についての瞑想を表している。
背景の明るい空、廃墟の影、手前の人物に当たっている光、上空は夕方?。
世界美術大全集15 マニエリスム
1520年代
ベッカフーミ
キリストの降誕
1522年頃 板 油彩 390×235cm
イタリア シエナ サン・マルティーノ聖堂