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慈愛

1518年から翌年にかけてアンドレア・デル・サルトはフランソワ1世に招かれてフォンテーヌブロー宮へ行っている。この作品を描いて国王の期待に応えようとしていたが、妻ルクレツィアからの再三の手紙のため1年足らずでフィレンツェに戻っている。
ロワール川沿いのアンボワーズに滞在していたレオナルドとは会っていないらしいが、この作品にはレオナルドのスフマートの影響があるとされる。またフランス宮廷の知的な図像表現、画面右側の火の燃える壺(慈愛の火)や左遠景の男性に囲まれた裸体の女性(官能性)が見られる。
「慈愛」という主題は14世紀前半イタリアの「授乳の聖母」が発展したもので、3人の子供が女性に群がり、一人が乳を飲むという図像が16世紀までにできあがった。二つの愛、神への愛と隣人愛を表しているとされる。この作品では手前の一人が背を向けて顔を伏せている。「慈愛」の図像としては例外的とされている。左前面の紙に署名と1518年の年記がある。
1510年代

アンドレア・デル・サルト Andrea del Sarto
慈愛
1518年 カンヴァス 油彩 185×137cm
パリ ルーヴル美術館
世界美術大全集12 イタリア・ルネサンス2