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神秘の降誕

画面上部にギリシア語で「私アレッサンドロは1500年の末、イタリアの苦難の時代、一つの時と半分の時の過ぎた時、すなわち聖ヨハネの「黙示録」第11章によれば悪魔が3年半にわたって解き放たれるという第2の災厄の時に、この絵を描いた。やがて悪魔は第12章に従って鎖につながれ、この絵におけるように〈・・・〉されるさまが見られるであろう」と記されている。〈・・・〉摩滅による欠落個所には普通「束縛」か「蹂躙」の字句が充てられる。1500年という年記(西暦1501年)と署名が入ったボッティチェリ唯一の作品、注文者等は不明。
降誕図の小屋と洞窟の組み合わせはビザンティン以来のもので多くの先例が残されている。この作品では聖母の背後に光りが射す林が見られるので復活まで示唆しているとされる。
小屋の左側にはピンクの衣裳の天使に導かれる三人(東方三博士らしいが服装は質素)、右側には白衣の天使と駆けつけた2人の羊飼い。屋根の上では3人の天使が賛美歌を歌っている。
上方の天界の黄金のドームの下では12人の天使が輪舞している。天使たちは他の作品では初々しい童女として描かれているが、ここでは痩せ細った姿で描かれている。
前景は後期ゴシックのようなジグザグ遠近法が使われ、岩陰には悪魔たちが逃げ込んでいる。最前景では小さい比例で天使と人類の代表3組が腕を組み合っている。1500年の至福千年への期待と、それとは逆の終末論的な恐怖、崩壊への怯えが伝わってくる。
1500年代
ボッティチェリ Botticelli
神秘の降誕
1501年 カンヴァス テンペラ 108.5×75cm
ロンドン ナショナル・ギャラリー
世界美術大全集11 イタリア・ルネサンス1