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司教ベルナルド・デ・ロッシの肖像

1480年頃ヴェネツィアで生まれたロットは、その特異な作風のため人気がなく、地方の都市を転々とした画家だった。鋭い現実の観察者だった画家は、ヴェネツィアの華やかな古典的絵画と同調することはできなかった。
右図は1503〜06年にトレヴィーゾに滞在しているときに描かれた、初期肖像画の一点。濃い緑のカーテンの前に立つモデルはしっかりと前方を見、わずかに開かれた唇は何かを言おうとしている。少し斜めを向く顔と紙片を握る右手以外に動きはなく、ケープは幾何学的形態で描かれている。カーテンの緑とケープの赤は補色関係で、黒と白がさらにコントラストを強めている。カーテンの上にわずかに青空が見える。
25歳頃の作品だが、モデルの個性的容貌と心理を冷静に観察し表現している。
1499年から1510年までトレヴィーゾの司教だったベルナルドは、1503年9月に暗殺されそうになった。そのとき救命の感謝として、ロットが描いた「聖母子と幼児聖ヨハネ、殉教者聖ペトルス」を奉納している。この肖像画の覆い板だった寓意画に1505年の銘とロットの署名があることから、制作年がわかる最初の肖像画。
1500年代
ロレンツォ・ロット Lorenzo Lotto
司教ベルナルド・デ・ロッシの肖像
1505年 板 油彩 54×41cm
ナポリ カポディモンテ美術館
世界美術大全集13 イタリア・ルネサンス3