この頃ヴェネツィアには共同利益の擁護、互助、同一聖人への信仰などで結ばれた市民団体・同信会が120ほどあったらしい。スキアヴォーニ同信会はダルマチア人の団体で、1501年に会館を設立しその祈禱室側壁の油彩カンヴァス画による装飾がカルパッチョに依頼された。カルパッチョは9点を制作、うち7点はダルマチア出身の聖人とされていた「若き騎士ゲオルギウス」「少年殉教者トリフォニウス」「賢者ヒエロニムス」にあてられた。他2点は「聖マタイの召命」「オリーヴ山での祈り」。
上図は「書斎の聖アウグスティヌス」。聖ヒエロニムスを描いたものとされていたが、祭壇の司教冠や笏杖から聖アウグスティヌスを描いたものとされている。
1500年代　竜と闘う聖ゲオルギウス

アウグスティヌスがヒエロニムス宛の手紙を書いているとき、窓から強い光りが射した。そのときベツレヘムで死去したヒエロニムスからのメッセージが光とともに届いたという場面。
中央奥のキリスト像、多数の書物、天体観測器具類、右手前の開かれた2冊の楽譜、子犬まで、当時の宗教的・人文主義的環境を示している。

カルパッチョ　Carpaccio
書斎の聖アウグスティヌス スキアヴォーニ同信会の壁画連作
1502年　カンヴァス　油彩　141×210cm
ヴェネツィア
スクオーラ･ディ･サン･ジョルジョ･デッリ･スキアヴォーニ
世界美術大全集13　イタリア・ルネサンス3