フィレンツェ市壁外のサン･ドナート･ア･スコペート修道院の注文で描かれた祭壇画。1529年に枢機卿カルロ･デ･メディチのコレクションに入り、その後ウフィツィに移された。
修道院は1481年にレオナルド･ダ･ヴィンチに祭壇画「マギの礼拝」を注文していたが、未完成のままレオナルドがミラノへ移り、その後の交渉も思わしくなかったため、改めてフィリッピーノに再依頼したもの。フィリッピーノは素早く制作し、裏面銘文に記されている1496年3月29日に完成した。
構図はレオナルドの未完成画を踏襲しながら、フィリッピーノ独自の奇想に富んだ構図になっている。斜めに傾いた小屋の前の聖母子とヨセフを囲んで、多様な身振り、人種、年齢の人々が賑やかに配されている。興奮した表情、怪異な風貌、刺激的な色彩が騒々しさを高めている。（ヨセフの右側の人々）
1490年代

ヴァザーリによると前景左の黄色い衣裳で四分儀（星の高さを測る器具）を持った人物はピエルフランチェスコ･ヴェッキオ･デ･メディチ、その後ろの二人の若者（緑と赤の衣裳）は息子のロレンツォとジョヴァンニとされる。
ピエルフランチェスコ（1430〜76、すでに故人）はコジモ（祖国の父）の弟ロレンツォの子、ピエルフランチェスコの息子ロレンツォはボッティチェリの「春」「ヴィーナスの誕生」の注文主、ジョヴァンニは黒隊長ジョヴァンニの父。
遠景左で星（小屋の上）の導きを受け、右へ向かい、山を巡って前方へ旅するマギとその行列が描かれている。

フィリッピーノ・リッピ　Filippino Lippi
マギの礼拝
1496年　板　油彩　258×243cm
フィレンツェ　ウフィツィ美術館
世界美術大全集11　イタリア・ルネサンス1